『ZOO』観てきました
2005年4月4日 日常八朔です。
http://www.zoo-movie.jp/index.html
乙一先生執筆の同名小説を映画化した短編作品集『ZOO』。
福岡での公開初日である一昨日、シネリーブル博多で観てきました。
感想です。ネタバレ考慮のため内容への過度の抵触は遠慮気味に。
・カザリとヨーコ
ファンやメディアが乙一先生を語る際に多用する賞賛の言葉、「切ない」。
原作でも一番手前に収録されている作品であり、これが乙一作品の魅力の全てとは言わないまでも端的に『ZOO』の素晴らしさを表している短編なのは確かです。
内容は、双子の女の子のうちカザリが幸福、ヨーコが不幸を背負って日常を過ごす話。小説のノリそのままで酷く痛かったです。
ちなみに私はこういう切ない話が好きなくせに苦手(ややこしい)で、原作小説もこの作品が最初に収録されていたせいでしばらく読み進めずにいました。読むと切なくて頭痛くなるから。
双子の命運を思うと胸が軋むほどに辛く、私と同じく乙一先生のファンである弟から感想を聞かれる度「ちょっと待って、心の準備ができてから読むから読破まで半年かかる」と言って死ぬほどコケにされた記憶も良い思い出です。
主演の女の子二人。
一方が幸せでもう一方が不幸なので、演者の表情も当然「陽の笑顔」と「陰の笑顔」に分かれるのですが、例によって「陰の笑顔」を好む私は不幸を背負いまくるヨーコに見入ってしまい、その不幸を風除け程度にしか思わないカザリは役としての意味合い以上に苦手意識を持ってしまいます。
ていうかヨーコが好き。
でも一人二役。
でもヨーコ愛。
・SEVEN ROOMS
乙一先生はかなりのゲーム好きだそうで(お気に入りは『トゥーム・レイダース』だとか)、そのせいか厳密に定義された世界をモチーフにした、ゲーム要素満載の小説を発表される事も多々あります。本作もそんな作品の一つです。
相変わらず、数学マニアや数字眺めマニアには堪らない話です。
経過を楽しむ感動よりも結果を知る感動のほうが大きい作品のため、原作のオチや設定を知っているとこの映画にのめり込めない可能性もあります。
『CUBE』のような、無機質な空間で有機的な心がガタガタに揺れる様子が素敵な作品です。
・SO-far そ・ふぁー
パンフレットにも衝撃の結末をバラすなとか何とか書いてありましたが、『シックスセンス』を引き合いに出すまでもなくその秘密の存在自体を明示してしまっては作品の魅力が半減する気がします。本作に限らず。
まあ、私は観た後の秘密を保有するワクワク感みたいな奇妙な感覚も好きなんで、一概にどちらが良いとは言えないですけど。
これも大オチがどんでん返しなため、原作を知っている方には魅力が薄いかもしれません。
私はオチ知っておきながら泣きましたが。
個人的に、最も映像化が楽しみだった作品です。主人公の男の子が持つ視界が現実から乖離する瞬間と、強引に現実へ引き戻される瞬間が素晴らしかったです。
他のお客さんでも本映画5作品の中で最も満足できた作品がこれ、という方が多いのではないでしょうか。
私はソファーに3人並んで座る絵を楽しみにしていたのですが、意外にも胸を打ったのはラストシーンでした。よく晴れたある日の午後、庭弄りをする両親と、それを離れて見守る男の子。ある種の幸せを描いたある種のハッピー・エンド。男の子に幸福なんて何も訪れてないのに。嗚呼、涙が、涙が頬を。
で、ここで発令した涙腺決壊警報が次の作品で実害へと移行するわけです。
・陽だまりの詩
本映画唯一のCGアニメーション作品。
実は、小説版のこの作品を観た時、いまいちピンと来ませんでした。作品内で描かれる様子が脳内で広がらないというか、何というか。
で、映像化された作品世界を見て腑に落ちました。落ちまくりました。ああ、こういう事だったのか、と。
『ZOO』の中では珍しく、結果ではなく経過を追っていく楽しみに溢れた作品。アンドロイドの女の子の心の動きを追っていくだけで胸が張り裂けます。『そ・ふぁー』で緩められた涙腺を涙が突破していきます。
手元にハンドタオル置いて映画観たのは『アメリ』以来です。
・ZOO
表題作。
ここまでの4作は、乙一作品らしい世界の広域さ、優しさ、分かりやすさがほぼ原作小説のまま映像化されていたのですが、この作品では見事に突き放されています。原作からのアレンジも大幅に加えられています。
問題作と言って差し支えないかもしれません。
主演・村上淳の名前を聞くだけで原作読破済みの人間は映像が想起できそうなベストキャスティングっぷりが見事ですが、主人公の説明的な心理描写を極力排除していたり作品内の時系列がバシバシ飛んだりするので、これまでの4作品に馴染んでいた鑑賞側の脳は豪快に揺さぶられます。
あまつさえラストは考えオチっぽく仕上がっています。映画館から出て一時間くらい経って「ああ、そうか」と思いましたし。
とにかく、どうにもこうにもややこしい作品。お子様にはお勧めできません。
とりあえず、これから映画館へ行って本作を鑑賞されようとする方に、思考処理の一助となるよう祈りつつヒントを。ネタバレではなくヒントを。
これさえ頭に入っていれば、そこから芋ヅル式に作品の内容が理解できるはずです。多分。
「ポラロイドカメラを持っているのは、主人公しか居ないんですよ」
・その他気付いた事
何よりも凄まじいのは、この映画の原作は一人の著者が作り上げたという事実。
映画監督5人で5作品、という形態を採ったのはそういう乙一先生に対するリスペクトの意味もあったのかも、と思いました。
一作品につき20〜30分程度と短いこともあり、全体的に「分かりやすい」雰囲気に満ちています。映画特有の小難しさは感じず(但し『ZOO』以外)、小気味良いテンポで楽しく鑑賞できました。
あと最前列のド真ん中に座ったくせに途中トイレへ立ったり足伸ばして寝たりする奴は死ねばいいと思いました。
http://www.zoo-movie.jp/index.html
乙一先生執筆の同名小説を映画化した短編作品集『ZOO』。
福岡での公開初日である一昨日、シネリーブル博多で観てきました。
感想です。ネタバレ考慮のため内容への過度の抵触は遠慮気味に。
・カザリとヨーコ
ファンやメディアが乙一先生を語る際に多用する賞賛の言葉、「切ない」。
原作でも一番手前に収録されている作品であり、これが乙一作品の魅力の全てとは言わないまでも端的に『ZOO』の素晴らしさを表している短編なのは確かです。
内容は、双子の女の子のうちカザリが幸福、ヨーコが不幸を背負って日常を過ごす話。小説のノリそのままで酷く痛かったです。
ちなみに私はこういう切ない話が好きなくせに苦手(ややこしい)で、原作小説もこの作品が最初に収録されていたせいでしばらく読み進めずにいました。読むと切なくて頭痛くなるから。
双子の命運を思うと胸が軋むほどに辛く、私と同じく乙一先生のファンである弟から感想を聞かれる度「ちょっと待って、心の準備ができてから読むから読破まで半年かかる」と言って死ぬほどコケにされた記憶も良い思い出です。
主演の女の子二人。
一方が幸せでもう一方が不幸なので、演者の表情も当然「陽の笑顔」と「陰の笑顔」に分かれるのですが、例によって「陰の笑顔」を好む私は不幸を背負いまくるヨーコに見入ってしまい、その不幸を風除け程度にしか思わないカザリは役としての意味合い以上に苦手意識を持ってしまいます。
ていうかヨーコが好き。
でも一人二役。
でもヨーコ愛。
・SEVEN ROOMS
乙一先生はかなりのゲーム好きだそうで(お気に入りは『トゥーム・レイダース』だとか)、そのせいか厳密に定義された世界をモチーフにした、ゲーム要素満載の小説を発表される事も多々あります。本作もそんな作品の一つです。
相変わらず、数学マニアや数字眺めマニアには堪らない話です。
経過を楽しむ感動よりも結果を知る感動のほうが大きい作品のため、原作のオチや設定を知っているとこの映画にのめり込めない可能性もあります。
『CUBE』のような、無機質な空間で有機的な心がガタガタに揺れる様子が素敵な作品です。
・SO-far そ・ふぁー
パンフレットにも衝撃の結末をバラすなとか何とか書いてありましたが、『シックスセンス』を引き合いに出すまでもなくその秘密の存在自体を明示してしまっては作品の魅力が半減する気がします。本作に限らず。
まあ、私は観た後の秘密を保有するワクワク感みたいな奇妙な感覚も好きなんで、一概にどちらが良いとは言えないですけど。
これも大オチがどんでん返しなため、原作を知っている方には魅力が薄いかもしれません。
私はオチ知っておきながら泣きましたが。
個人的に、最も映像化が楽しみだった作品です。主人公の男の子が持つ視界が現実から乖離する瞬間と、強引に現実へ引き戻される瞬間が素晴らしかったです。
他のお客さんでも本映画5作品の中で最も満足できた作品がこれ、という方が多いのではないでしょうか。
私はソファーに3人並んで座る絵を楽しみにしていたのですが、意外にも胸を打ったのはラストシーンでした。よく晴れたある日の午後、庭弄りをする両親と、それを離れて見守る男の子。ある種の幸せを描いたある種のハッピー・エンド。男の子に幸福なんて何も訪れてないのに。嗚呼、涙が、涙が頬を。
で、ここで発令した涙腺決壊警報が次の作品で実害へと移行するわけです。
・陽だまりの詩
本映画唯一のCGアニメーション作品。
実は、小説版のこの作品を観た時、いまいちピンと来ませんでした。作品内で描かれる様子が脳内で広がらないというか、何というか。
で、映像化された作品世界を見て腑に落ちました。落ちまくりました。ああ、こういう事だったのか、と。
『ZOO』の中では珍しく、結果ではなく経過を追っていく楽しみに溢れた作品。アンドロイドの女の子の心の動きを追っていくだけで胸が張り裂けます。『そ・ふぁー』で緩められた涙腺を涙が突破していきます。
手元にハンドタオル置いて映画観たのは『アメリ』以来です。
・ZOO
表題作。
ここまでの4作は、乙一作品らしい世界の広域さ、優しさ、分かりやすさがほぼ原作小説のまま映像化されていたのですが、この作品では見事に突き放されています。原作からのアレンジも大幅に加えられています。
問題作と言って差し支えないかもしれません。
主演・村上淳の名前を聞くだけで原作読破済みの人間は映像が想起できそうなベストキャスティングっぷりが見事ですが、主人公の説明的な心理描写を極力排除していたり作品内の時系列がバシバシ飛んだりするので、これまでの4作品に馴染んでいた鑑賞側の脳は豪快に揺さぶられます。
あまつさえラストは考えオチっぽく仕上がっています。映画館から出て一時間くらい経って「ああ、そうか」と思いましたし。
とにかく、どうにもこうにもややこしい作品。お子様にはお勧めできません。
とりあえず、これから映画館へ行って本作を鑑賞されようとする方に、思考処理の一助となるよう祈りつつヒントを。ネタバレではなくヒントを。
これさえ頭に入っていれば、そこから芋ヅル式に作品の内容が理解できるはずです。多分。
「ポラロイドカメラを持っているのは、主人公しか居ないんですよ」
・その他気付いた事
何よりも凄まじいのは、この映画の原作は一人の著者が作り上げたという事実。
映画監督5人で5作品、という形態を採ったのはそういう乙一先生に対するリスペクトの意味もあったのかも、と思いました。
一作品につき20〜30分程度と短いこともあり、全体的に「分かりやすい」雰囲気に満ちています。映画特有の小難しさは感じず(但し『ZOO』以外)、小気味良いテンポで楽しく鑑賞できました。
あと最前列のド真ん中に座ったくせに途中トイレへ立ったり足伸ばして寝たりする奴は死ねばいいと思いました。
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