八朔です。


一応断っておきますけど、私は『M-1グランプリ』というコンテストをこの上なく信用していますし、そこの決勝に伸し上がってきた8組+1組のコンビは間違いなく最強の漫才芸人だと信じています。

その前提を踏まえて、以下の雑感を読んでいただければ幸いです。
こっちが褒めてても「貶してる」って感じる人が多いらしいので。全ての人が同じ心の持ち主だなんて思ってないし。笑いと政治と宗教と野球は誤解を招きやすい話題。

例年通り、公式BBSも鬼のように荒れてるし。



----------

・千鳥:
「ダウンタウンを観て育った世代は、先年の芸人が培ってきた技術を一旦破棄する傾向がある」という話を聞いたことがあります。
千鳥と東京ダイナマイトは、今回のM-1決勝の中でそういったタイプの「欠落」を最も感じたコンビでした。

ラサール石井が言っていた「中盤から終盤にかけてのもうひと伸び」をやらない事で、見る側をヌルい気分に陥れて漫才の作家性を高めた、とでも言えばいいんでしょうか。
もはや漫才の常套手段が観客からも容易に理解できる現在だからこそ、その辺を上手くハズして虚を突きそれを笑いに転化する、という手段が有効になるんですね。


・タカアンドトシ:
これ以上ない正統派。
上手、って言う以外の褒め言葉が思い浮かびません。ごめんなさい。


・東京ダイナマイト:
私事で申し訳ないんですが、このコンビのボケ役・松田大輔がピン芸人だった頃オンエアバトルに出演し、「エアウォーカー漫談」という有り得ないジャンルでラーメンズのオンエア権をボール3個差で奪取した過去は、ラーメンズファンの私にとって忌まわしい記憶として脳裏にこびりついています。

いや、大好きですけど。


・トータルテンボス:
何が半端ねぇって言語感覚が半端ねぇ。
間の取り方・ネタの進行方向よりも、言葉自体の面白さの比重が他のコンビより大きかったような気がします。

トータルテンボスのキャッチフレーズである「渋谷系漫才」、実は本人たち発信で使われているらしいんですが、このコンビを指して「渋谷系」とか言うと、常に歪曲している「渋谷系」の言霊が更に歪曲してくんで大変だと思います。別にいいですけど。


・南海キャンディーズ:
ね!だから最終決戦進出するって言ったでしょ!ね!?(それは誰に向けたしたり顔なんだ)

本来ならばボケを補佐する役のツッコミの領域を逆にボケと転換し(例えば、ツッコミを意外性のある言葉にするとか)、それでネタを作っていくパターンは俗に”ふくらまし”と呼ばれ(出典:エンターブレインムック『人力舎パワー』)、他のコンビではキングオブコメディなどが使用している芸風です。

素晴らしいのは、両者のコントラスト。
マイペースで腹の立つ女が「火を怖がるサイ」を唐突に演じながら、その横で本流の医者コントを続けつつ応答が無いと半ば諦めつつもサイ女にメスを要求する、その寂しげな顔と声。
最高。


・POISON GIRL BAND:
今回、恐らく千鳥の次に順番決めの被害を被ったコンビ。実は一つのボケから世界を膨らませる者同士、南海キャンディーズとこのコンビは多くの共通項で括られているんですね。多分

このコンビは、見る側に想像させます。きっと今回の漫才を見ていた人たちは皆一様に同じイメージを想起していたはずです。
全員が「中日帽子取りゲーム」を脳内でシミュレートし、落合・立浪・川上憲伸をスペシャルカードとして定義していたはずです。
更に言えば、何故かそこに紛れ込んでいた西武の旧選手会長・和田の帽子を取ってしまうと、何らかの大きなペナルティを科せられると考えていたはずです(フランシスコ・ザビ散らかしてるから)。

講談師のように切々と状況説明を行うため、今、そこで話している、という事が非常に重要であり、敢えて言うならばアンタッチャブルの次にライブ感を重要視していたコンビだと言えるでしょう。


・笑い飯:
テクニックだけで言えば間違いなく、今年が過去最高だったはずです。
素人目に見て上手くなったのが分かるってのも凄いですが。

じゃあ何が足りなかったのか?
そりゃ勿論、奈良県立民俗博物館の人形です。


さっき見つけてビックリしたページ。
http://www.pref.nara.jp/bunkak/minpaku/hakubutu/

書くな書くな。


・アンタッチャブル:
「勢いだけで中身が無い」とか言ってる父親に説教しました。
あなたは約10年前『東京Aランチ』に彼らが出演したときに見せた、デビュー当時の凄ぇ完成度の高い漫才を知ってるのかと。
それをM-1グランプリ2003の最終決戦で再び目の当たりにした私の感動をあなたと共有できるのかと。


・麒麟
M-1の中で最も象徴的な存在だと思います。
過去の実績に全く関係なく漫才の面白さだけで判定されるという、絵空事めいたスローガンに信憑性を感じるのは、このコンビが正しく判定されているからだと。



その他。


・井上和香がカミ倒してました。

非常にストイックな番組構成の中で、唯一「テレビ」であるための記号として居る人なのは分かりますが、その女子アシスタント主導で芸人名コールが行われるのはどうかと思いました。
でも、南海キャンディーズのネタでカメラが向いたとき、そのネタに応じて表情を作ったのはナイス。


・毎回、番組終了後はネットで鬼のように叩かれる審査員ですが、誰だってあんな厳しい場所にいたかないよな、と。順番なんて絶対に付けられないモノに数値で評価しようとしてる訳ですし。
立川談志、松本人志、島田紳助と審査員側を神格的な立場に置ける人達が次々と抜けていくのが、視聴者として本当に残念です。
代役はオール巨人を呼べオール巨人を!!(勝手な妄言)

でも、漫才経験者でしかも未だに第一線で仕事している人達をあれだけの数、審査員として並べているのは本当に凄いと思います。ヨソの新人演芸大賞とか、笑いに1ミリも関係ない人がそこに座ってたりするし。


・何故ネタ順抽選に吉田沙保里が呼ばれたのか、一瞬だけ悩みました。
恐らく「公正を期して」って事なんだと思いますが、それは分かったからフットボールアワーを呼べフットを!!(実直な意見)


・こんなダラダラした感想を長々と書いてても所詮素人の戯言であり、だからこそM-1にアマチュア参加したかったんですけど、相方居ないしなぁ。

あー出場してぇ。2005。

コメント